磯貝 浩一郎、koichiro isogai, フリーランス、

ドイツ、アートディレクター日記

海外でフリーランスや、クリエイティブ職に興味がある人達に向けて

日本が捕鯨を続ける合理的な理由を教えてください

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こんにちは、北ドイツのハンブルグでアートディレクターをしている、コイです。私の住むドイツで年末に、日本のIWC (国際捕鯨委員会) 脱退のニュースが駆け巡りました。それについて、私の思うところを後述したいと思います。 まず、ゆったりとしたドイツのクリスマスのお話から。

ドイツのクリスマスの過ごし方

クリスマスで、パートナー (事実婚なので、妻と呼ばずこのように呼びます) の実家に来ています。ドイツのクリスマスは、家族でゆっくり過ごすことが大前提で、日本の大晦日に似ています。

昔の日本の正月は、3日までやることがなかった

ほぼ全ての商業活動が停止しているので、基本的に暇で、家族とゲームしたり映画を観たり、本を読んだりしかすることしかなく、この忙しいご時世、それはそれでいいと思います。私が子供の頃の日本の正月は三日まで休みが基本で、こんな感じでした。

親戚挨拶回り(笑)

この時期、やはり日本の正月のように親戚回りも行われます。コーヒーを飲み、お菓子をつまみながらの談笑は、ドイツの寒く暗いクリスマスにおける暖かい風物詩の一つです。

日本のIWC脱退のニュースが駆け巡る

そんなまったりとした年末に、日本のIWC (国際捕鯨委員会) 脱退のニュースがドイツを駆け巡りました。そもそもドイツは現代の捕鯨に批判的で、また、日本が捕鯨を続けていることを知らないドイツ人はいないくらい、このテーマに関心が高いのです。このニュースは、年末の人々が家に篭る時期に、老若男女全てに隈なく行き渡り、親戚回りの人々と談笑をしている際になんども聞かれる羽目になりました。子供からお年寄りまで、皆、私の口からそれについて聞きたがります。

なぜ、日本は絶滅危惧種である鯨を獲るのかという質問

ドイツの反捕鯨にもいろいろなトーンがあります。知的水準の高い動物である鯨を獲るべきでない、という急進的な考え方や、絶滅危惧種だからという理論的な意見まで、千差万別です。前者のような感情論を持つ人とは、議論の行き着く先が全くないので私も話し合いたくないのですが、私が経験したほとんどの議論は後者、つまり絶滅危惧種だから獲るべきでない、というものです。私は現代の捕鯨に全く賛成していないにも関わらず、家族の集まりや職場、飲み会などで図らずとも日本の立場を代表するものとして弁明を求められ、正直うんざりしています。

日欧米オセアニアで、いつまでも交わらない議論

日本の捕鯨は、絶滅危惧種ではない種に限っている、と言われていますが、本当でしょうか? こう言うと誤解を招くかもしれませんが、それが本当かどうかは、私にはもうどうでもいい事です。それをドイツ人と議論し、私の言っていることの裏を取ろうと思っていろんな資料を違う言語で調べてもみましたが、双方の意見は言っていることが違い、平行線をたどり交わることがなかったのです。これがこの問題の本質、「交わることがない」のです。

 

前記の通り、違う立場の弁明を求められることにうんざりした私は、いつしかこの議論を放棄しました。つまり、この話題には触れないことにしたのです。聞かれても、日本のやっている事は、私のポリシーと違う、という事で議論をしませんでした。

 

日本でもしかり、欧米の反捕鯨を支持しているわけではなく、外から見た日本の捕鯨に対するイメージを説明し、日本の国益を失している、という意見を言うだけで、議論がとても感情的になり建設的にならない、という経験を何度かし、やはりうんざりしてそれについて語ることもしなくなりました。

だからと言って議論をやめていいのか?

しかし、今度のIWC脱退というニュースは、我々が思っているよりはるかに大きく諸外国で取り上げられている出来事で、過小評価をするのはとても危険だと思います。

 

一番まずいのは、自分への戒めのためにも言いますが、議論を放棄した事です。これだけ議論が平行線を辿ると、議論を続けることを放棄したくなるのは、前記の通り私も十分に理解できますが、国の代表が国際的な場で議論を放棄して、プラスに働いたことが歴史上あったでしょうか?

じゃあどうしたらいいのか?

解決策が見つからない、議論が行き詰まっている、じゃあどうしたらいいのでしょう? 答えはありません、すみません。 でも私が思っている事は、以下です。

 

国は国益を考えて動いています。もちろん、自国のことだけを考える近視眼的なスケールではなく、包括的に、しかし、最終的には国益になるように行動、判断するのが基本であり理想です。これを考えると、私の目には、どうしても日本が捕鯨の立場を貫くことが国益になるとは思えません。

 

シーシェパードの行動や反捕鯨映画(The Cove)などの一方的で暴力的なものの見方に私も怒りを覚えますが、捕鯨は日本の伝統的な行動だ、と言われてもしっくりこないのは、地域差でしょうか? それとも屁理屈でしょうか? よもやツッパリでしょうか笑? 100歩下がって捕鯨が日本の伝統文化ということにしても、南極海の捕鯨はまさか日本文化の一部ではないでしょう。

 

ドイツに住み、外から日本を見る私の個人的な意見は、国益を考えての捕鯨の放棄です。人から言われて自分の行動を改める事は、私個人的に最も嫌いなことではありますが、それをしないことによって被る不利益を考えれば、理論的ではないでしょうか? 現代の捕鯨は国際的な関心がすこぶる高く、SNSなどで感情的に拡散され、それを続ける捕鯨国のイメージを必要以上に貶める上に、鯨肉に対する商業的な需要もない、これ以上の非合理性を私は知りません。

まとめ

捕鯨については、前記の通り、ドイツに住んでいて何度も遭遇したテーマであり、ネタにされたり、何度もした行き詰まった議論など、良い思い出はありません。日本でそれについて語ることもしかり、ですからその話題をなるべく避けるようにしていました。でも今回の日本のIWC脱退という物騒なニュースを聞いて、それが物騒であることを日本の皆さんにお伝えしたいと思い、今一度考えてみました。皆さんにも考えるきっかけにしてもらえると幸いです。