磯貝 浩一郎、koichiro isogai, フリーランス、

ドイツ、アートディレクター日記

海外でフリーランスや、クリエイティブ職に興味がある人達に向けて

ミラノで行われたデザイン国際見本市に、メーカーとして参加して考えたこと

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こんにちは、北ドイツのハンブルグでアートディレクターをしているコイです。


1. ヨーロッパの見本市に展示者として参加したいと考えている方
2. 未来の見本市のあり方に興味がある方

 

の参考になれば幸いと思い、私の経験と考えを共有します


国際見本市とは

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ヨーロッパの大きな都市には必ず見本市会場があり、どの都市も税金から捻出される多額の資金を投下して巨大な見本市会場を建設し、ビジネスの誘致や国際取引に熱心です。


確かに見本市は、各メーカーが時間と資本と努力を注いで作った商品をお披露目をする場所であり、世界中から集まったバイヤーに出逢える場所です。バイヤーにとってはそこにくれば最新のトレンドと国際的でイノベーティブな商品に出会える場所であることから、小売り業者とメーカーには最も大事な機会の一つなのは間違いがありません。


その上、人が往来することで生まれる経済効果を考えると、それは国家的規模のビジネスと言っても過言ではないでしょう。


国際見本市は時代遅れ?


しかしコロナの前からすでに、国際見本市の存在意義には議論がありました。


それは費用対効果の問題からです。メーカーにしたら数日の開催期間のために、高額な参加費と展示会場を作り上げる為の多大な投資が求められ、バイヤーにしても、地元であるならともかく、国際見本市に参加するとなると渡航が必要になり、ホテルや飲食などの滞在費、そして双方とも貴重な時間が取られてしまう現実があります。


これをお祭りとして捉えるなら、それに参加したい人たちが盛り上がればいいだけの話なのだけど、国際的に商品を売りたい会社にはマストであることのように考えられていることに、何度か国際見本市にバイヤーのお手伝いとして、そしていちメーカーとして参加した私は疑問を抱いていました。


この常時インターネットに繋がっている時代、ソーシャルネットワークが台頭し得られる情報量が圧倒的に増えた上に、それらを得る為のコストが劇的に下がったこの時代に、物理的にそれほどの費用と時間をかけることは、もはや時代遅れなのではないかと思っていました。


コロナ禍で国際見本市はどうなったか


そんな矢先にコロナが猛威を振るい、ロックダウン下の規制で世界中の見本市が中止され、既存の見本市業界はなんとか活路を見出そうと、こぞってオンライン見本市を開きましたが、実際の見本市で得られるエクスペリエンスからは程遠いものだったと言わざるを得ません。


それは発想の転換や新しいコンセプトがあるわけでもなく、既存の見本市をデジタルに置き換えただけのものに終始していたからで、そんな付け焼き刃の興行で業界は利益を取りっぱぐれていました。だって会場を用意し、複雑なオペレーションをする必要がないのだから、参加する側からしてみれば、お金を払う理由が見出せないというのが実情ではないでしょうか。


今まで通り沢山のメーカーとバイヤーに声をかけて、何日から何日まで開催しますので、商取引をしてね、と言っても、物理的な見本市のように人が集まるわけもなく、有り体に言えば盛り上がりに欠けるのです。


ワクチンの普及、そして再開


そうこうしているうちにワクチン接種が進み大きな催しが解禁され、見本市業界も一年半の空白を取り戻そうと、怒涛のように次々と開催されることになりました。


それに参加するメーカーも、長いこと公の場で商品をお披露目する機会を奪われていたし、オンライン見本市の物足りなさにイライラしていたから参加しない選択肢はないという訳です。


上記したように、見本市の存在意義に疑問を抱いていた私も、今の所これに相当するチャンスがないので、ミラノという一級国際都市でおこなわれるという魅力と、ミラノサローネというデザイン界隈ではとても有名な催しが同時期に行われるということもあり、手弁当で参加することにしました。


ライフスタイル国際見本市HOMI Milanoに参加した

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私は自分の持ち出しで参加する小さなデザインスタートアップなので、一番安いブースをさらに値切ってもう1メーター小さくしてもらい、ナシナシ(追加料金のかかる付属品を断り)で参加しました。


そこにいること、そして商品の魅力が重要なので、ブースの立派さは関係ないと私は思います。ただその商品がよく見えるような仕掛けや努力は当然必要です。


見本市はいつもそうですが、買いたい人(バイヤー)と売りたい人(メーカー)の需要と供給がマッチしているのでとても雰囲気が良く、話が早いのが特徴です。


しかもミラノデザインウィークが同時に開催されたこともあって、とても盛り上がっていました。


言葉の壁


しかしここで問題に直面しました。イタリア人は、英語がマズイのです笑


もちろんオーガナイザーや代理店(エージェンシー)、ディストリビューターは英語が堪能ですが、小売業者、特にショップオーナーの方々は殆ど英語が喋れません。それは予想していましたが、ここまでとは! 


展示会で注文を受けて顧客を増やし、その上でこの参加費と旅費に充てがう算段は脆くも崩れてしまいました。言葉が通じなければ、お金を出してもらうのは非常に困難です。


私はドイツ語と英語を話します。ネィテイブのように堪能なわけではありませんが、自分の商品を説明してコミニケーションを取ることには問題がありません。でも見込み顧客が英語はもとよりドイツ語も、ましてや日本語も喋れないとなると、イタリア語ができない私は八方塞がりです。


さぁどうする!?


営業の重要性


私はずっとデザイン畑で生きてきた人間で、それまでずっと作ったデザインを営業に丸投げしていて、ビジネスを知りませんでした。6年前に独立してフリーランスのグラフィックデザイナーで生計を立てたところまではよかったのですが、それが致命的ということに気づいたのは、 2年前に自分のデザインプロダクトをローンチしてからでした。


作ったはいいけど、売らないことには継続できないし、営業ができる人を雇う資金もありません。一から自分で学んでいくしかありません。


新しい販路の開拓


私があてがわれたブースは、値段相応の場所でした。巨大なホールの端っこで、お世辞にもよい場所とは言えませんでしたが、ここで幸運の女神が(少し笑)私に微笑んでくれました。


4日間行われたフェアの中日にプロモーション関連のセミナーが行われ、その参加者たちがたまたまその会場の横に位置していた私のブースの前を通り、商品に興味を示してくれました。私の商品は、図らずともプロモーションユースにピッタリだったのです。その上彼らは英語に堪能で、コミニケーションにも問題がなく、実際に注文を受けたわけではありませんでしたが、大口取引につながる可能性を掴むことができました。


めでたしめでたし、ではもちろんなくて、これからそれを掘り起こしていかなくてはいけませんが、とりあえず掘るべき場所がわかったことは大きな収穫でした。


ミラノサローネ

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4日にわたって開催されたデザイン見本市が終わり、後日同じ会場の別のホールで同時期に行われていた家具の世界最大級見本市、ミラノサローネに行って、前記の見本市の意義を再考させられました。


家具は触らないと、そのよさが伝わらない(!)のです笑、いや、正直に言って私個人的にはそうは思いませんが、2021年現在、今のところ殆どの人はそう思うでしょう。そこには紛れもない物質-オブジェクトが存在していて、誰もがそれに触りたい、それに座りたいと思わせる美しさがあるのです。


見本市はパンデミックのために例年の数分の一に縮小されたらしいのですが、それでも大変な賑わいで、一年前に人がバタバタ死んだ国とは思えない程の人出で、ソーシャルディスタンスは過去のものになっていました。おいおい、ホントに丈夫かい。


まとめ


美しい家具に触ることができて、見本市の意義を再考した私ですが、それでも未来に見本市が今の形から変わっていくことにほぼ確信があります。


どのような形になるのかは分かりません笑が、メディア、音楽、モビリティ(自動車)業界を始めとした多くの業界が、新興勢力(大雑把に言うとIT)に、私たちが想像もしなかったやり方でとって変わらられたことを考えると、あまりに物理的なやり方に縛られている見本市のやり方が変わらないはずがないと思うのです。


それがいつ来るのか分かりません。ストリーミングミュージックが音楽業界を駆逐してしまったように、ある日突然その日が来るのかもしれませんし、デジタル情報機器がメディア業界のパイを徐々に奪っていったように、ゆっくり変わるのかもしれません。


でもそれが起こるまで、私も従来型の見本市に参加し続けると思います。


ここまで読み進めていただいて、ありがとうございました。


そうは言ってもまだまだ国際見本市の重要性は、この先しばらく続くと思われます。もしご自分のプロダクトを国際見本市で展示したい、またはバイヤーとしてヨーロッパの製品を買い付けたいと思っている方は、ぜひご連絡ください、お力になります。