磯貝 浩一郎、koichiro isogai

ドイツ、アートディレクター日記

海外で、特にクリエイティブ職で働きたい人たちに向けて

出版業界は生き残れるのだろうか? いや... 無理じゃね?

ドイツ大手出版社から仕事を依頼され、数日間、ホームオフィス(遠隔で、自宅から仕事をする)で働いた。呆れるほど非効率的な20世紀的な手法で原稿や情報をやり取りする様を見て、やっぱり出版業界に未来はない、と確信した。

 

いくつかの先進的な出版業界向けの共同作業(コワーキング)用の遠隔サービスがあるにもかかわらず、そういう効率的なワークフローは使わず、未だにメール、コピペ、電話の嵐、挙げ句の果てにはタクシー飛ばしてウチに来い、とか、びっくりするほど前近代的。もちろん現代的なワークフローを取り入れている出版社もあるのだろう(私は知らない)が、仕事の仕方云々、というより、時代と共に自分を変えていく柔軟さがない組織は、恐竜の例を出すまでもなく間違いなく、衰退、吸収され消滅する。

 

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何が問題なのかははっきりしていて、彼らの存在がそのビジネスモデルの上で成り立っているからである。そこに働く人たちは、プライベートでももれなくタブレットコンピューターを1台以上所有しているに違いなく、つまりメディアの現状と将来をはっきりと認識しているはずなのに、根本的に何も変われないことからも明らかだ。

 

音楽業界がその前の生贄だった。彼らもストリーミングなどの台頭により、今までのビジネスモデルが立ち行かないのがはっきり見えていたにもかかわらず、なすすべもなく(なさずに)他の業界、具体的にはIT業界に全てに近いパイを持っていかれた。

 

出版業界は、すぐにもインターネットに置き換わるだろうという当初の予想を超え、まだ踏ん張っているのが現状、それも時間の問題で、音楽業界ととてもよく似た経路を辿るであろうことに、疑いの余地はない。

 

追記:

 

請求書をメールに添付したPDFで送ったら、郵便で送りなおせ、と言われた。どっちでもよくね笑? むしろメールでそれを伝えるために返信しやりとりする時間や手間、PDFをプリントアウトしポストに投函する時間や手間、郵便物を物理的に届ける時間や手間、郵便物が数日後に届いてそれをまた手動でシステムに入力する時間や手間を考えると、不必要なエネルギーをいくらか節約できるPDFの方がなんぼもいい

んじゃね? 

 

 

ある日突然、契約を切られた

フリーランスだから、いつか契約が切れて当然なのだけど、今回は予想を超えて長丁場になり、5回の契約延長、6週間の契約が、最終的に15週間になったので、いつそれが終わるのか全く見えなかった。で、予算がオーバーして、あえなく契約終了。

 

資料やモックアップ、やりとりした記録などの膨大なデーターを、倉庫に使っている外付けハードディスクに移し、仕事で使っていた、先方とのやり取りのためのウェブクラウドやGitなどのコミニケーションツールからログアウトし、ラップトップを軽くしてやる。

 

次の日から、それでもいつもと同じ時間に起き、娘を起こし学校に送り、そのあと家族と朝食をとる。それまでは一杯一杯でできなかった家の事や他のプロジェクトに取り掛かる時間ができたことが嬉しい。

 

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4ヶ月近く毎日、週末も働いたプロジェクトが、まだ製品が完成してもいないのに、次の日から全く関係のないことになった。プロだから全力を尽くしてプロジェクトに従事するけど、最後まで見届けることができなければ、やはり達成感が得られない。達成感を得るために仕事をしているわけではないのだけれど、それは困難を克服し、前に進む原動力になるもので、終わらないものに取り組まなくてはいけない苦しさや、途中だけ手伝わされている物足りなさと比べると、モチベーションに差が出てくるように思う。

 

例えるならそれは自分の子供ではなく、人の子供の世話をするのに似ているかもしれない。代理店の仕事はそもそも請負の仕事で、依頼人の広告やプロダクトを作る手伝いをすることだが、代理店の社員の頃は、それでも自分に任されたプロジェクトを自分の子供のように考え、世話をしていた。フリーランスではもっとドライにとらえなくてはならない。

 

代理店からの依頼は支払いがよくて魅力的なので、そこで割り切って、達成感のあるプロジェクトを自分なりに見つければいいのだと思う。

 

 

 

クライアントとケンカ

正確に言うと、ケンカではなく、議論、ドイツではよくある、お互いの相違する意見をぶつけ合うことである。

しかし不運にも、それは仕事上のことではなく、最も避けたいテーマであるお金のことで起こった。

明日に予定されていた、代理店の、そのまたお客さん(広告主)の会社での合同ミーティングが、突然来週に延期になった。私の住むハンブルグから新幹線で4時間でフランクフルト、そこからさらに30分くらいのところにあるダルムシュタットという街に行かなくてはならなかったので、すでに新幹線のチケットとホテルをブッキングしていた。払い戻しは今の段階では不可能で、それを経費として代理店に払って欲しい、という話をしたところ、もめたのである。

もうこのプロジェクトのためにフランクフルトに4回、ベルリンに1回、数日の滞在を含めて行っているが、旅費は全て自腹、それが契約だから仕方がないのだけど、今回は、そちらの都合で起こった損害を補填して欲しい、という意図だったが、契約がオールイン(経費全額自己負担)という反論を受けて、電話での議論は平行線をたどった。

結局、契約書に小さく表記されていた、クライアントミーティングに関する項目を見つけて、前回の旅費までさかのぼって支払いに応じてもらう、という、私からすると十分納得できる結果に終わった。

代理店からの日当はすこぶるいいし、小さな矛盾に固執して嫌われるのもどうなのか、とも思うけど、この数ヶ月、今までにもこういう、連絡不行き届きみたいなだらしない状況があって、何度か肩透かしを食わされていた。 その度に、まぁ、いいや、フリーランスだし、お金もらっているし、と自分を納得させてきたけど、度合いやタイミングにもよるけど、自分が信じていることを対立を恐れずに主張できないと、人の言いなりになってしまい、つまりは私の言うことや存在の価値も相対的に下がって、仕事もしにくくなりパフォーマンスを発揮できず、引いては仕事をもらえなくなるのではないか、ということを、ブログを書きながら考え、モヤモヤした気持ちがちょっと落ち着いた。

 

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クリエイティブ業で、海外移住する

ある、映像、舞台美術をしている方から、ドイツに拠点を移したいけど、どうすればいいか、という質問を受けたので、それに応える事で、自分が海外移住する際に辿った道筋を思い出した。

とても個人的な経験だから、他にも色々な方法があると思われるけど、似たような悩みを抱えている人の参考になればと思い、後記する。

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実績があって、それらをポートフォリオとして見せることが出来るなら、こちらで仕事を得るチャンスは大だと思います。ドイツにおけるモダンな映像や舞台美術表現は、とてもレベルが高く、学ぶところも大きいと思いますが、日本での映像分野の経験や実績は、こちらでも十分通じるレベルだと思うからです。

アーティストビザや、舞台美術監督の雇用形態については、私は詳しいことは知らないので助言は避け、私の経験したことをお話ししますが、こちらでの職場、お給料を払ってくれるところを見つけることは、ビザを得るのと同じくらい重要だと考えます。それは、労働ビザと滞在ビザが紐づけられているからで、労働ビザを得るためには滞在ビザが必要で、滞在ビザを得るためには、労働ビザが必要という、卵が先か、鶏が先か、に似た問題があるからです。

つまり、受け入れ先の会社が、この人間が必要だ、という証明書を発行してくれさえすれば、労働ビザと、滞在ビザが同時に下りるというわけです。その会社には、あなたに給料と、あなたの分の社会保障を支払わなければならない義務が生じます。 これはなかなか敷居が高そうですが、あなたが必要であると思われれば、言い換えるなら、会社の負担があなたを雇う価値より大きくなければ、十分可能な話です。

私なら、取り敢えず渡独し、ポートフォリオを見せ、最初はアシスタントや練習生-プラクティコム(独)-として現場に入り込み、チャンスを伺います。ビザなしでいれる3ヶ月間は、あなたがそこで何をし、どうチームに貢献したかを評価されるに十分な時間だと思います。 あなたのパフォーマンスが評価され、正社員としてそこに残ることが出来れば、キャリアが始まります。受け入れ先を探すのも簡単な話ではありませんが、まず現地に暮らし、人と繋がり、言葉を学ぶことによって、チャンスはいくらでも広がる可能性があります。

大学に行く、など他にもいろんな方法があるとは思いますが、以上は私がここで暮らし始める時にした行動と、その結果です。参考になれば。

私もベルリンには、距離が近い(新幹線でハンブルグから1.5時間程)こともあり頻繁に訪れます。ベルリンはドイツ一のコスモポリタンな都市で、ドイツ語を話さなくても通用する素地があるようですが、言語が話せると可能性の広がりが大きいのに間違いはありません。

ちなみに、私の住むハンブルグにも大小沢山のシアターがあり、映像、舞台美術関係の仕事はたくさんあります。いろんな可能性に目を向け、フレキシブルに行動することが、チャンスを掴む事につながるのではないかと思います。

 

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遠隔 (リモート) で仕事をするということ 2

考えてみれば、デジタル写真が世の中に出た時も、オンラインストリーミングで映画を観ることも、デジタルに変換した音楽を定額で聴き放題というのも、新聞をデジタルデバイスで読むことも、SNSも、もっと言えば携帯電話ですら、つい最近我々にもたらされたもので、それらを導入する時は、今までの生活習慣や常識を大きく変えなくてはいけなくて、必ず文句を言う人がいたけど、しかし時代がそれを飲み込み、結局一般化されていった。

 

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昨日、遠隔で仕事をしているフランクフルトに電車に乗ってリアルに出向いた。仕事が大事な局面にきているから、と思ってのことだったが、結果からいうと、別に必要がないことだった。

 

フランクフルトにいる同僚とコミニケーションを取ったことは収穫ではあったけど、そこからも結局、ベルリンにいる他の同僚とスカイプを使って仕事をした。私は何してるんだ... 自腹で電車賃とホテル代、そして貴重な時間を使っているのに、出張した先で、リモートで働いているとは!

 

私が必要に迫られていないのに、わざわざ先方に出向いた本当の理由は、私の言語能力に不安があるからで、オンラインで複数人で物事を決めていく会議に参加するのは、何年やっても苦手意識がある。電話会議で発言しないという事は、いないも一緒だから、とても集中しなくてはいけないのだが、往々にして会議は長い笑。

 

やっぱりリアルで会ったことがある人との方が、遠隔で仕事をする時も、事がスムーズに運ぶよね、と今でも思っているけど、近い将来、そういう考え方は、もの笑いの対象になるに違いないし、もう既に、そういう時代に我々も適応しつつあるのかもしれない。

 

遠隔(リモート)で仕事をするということ

最近はフリーランスの仕事でも、リモート(遠隔勤務)が許される場合が多く、自分の住む都市のクライアントに限らなくて済むのは、選択肢の可能性が広がる。

 

ドイツは、イギリスやフランスと違い、近代まで国家統一していなかったその歴史から、中規模都市が国中に分散していて、それぞれが独立した非一極集中型の国で、つまり都会と呼べるような都市ががいくつもあるのが特色である。

 

私の住むハンブルグは基本的に、出版社やテレビ、広告代理店、制作会社などが集中しているメディアの中心地ではあるが、他の都市にももちろんクライアントになりそうな会社・団体はある。

 

今回のクライアントは、フランクフルトとベルリンに社を構える広告代理店で、仕事は、ドイツ最大手の電話会社が運営する、オンデマンドムービーのプラットフォーム作成である。私は美術担当のアートディレクターとして2~3ヶ月間の契約で雇われて、自宅のあるハンブルグからベルリンとフランクフルトにいる同僚と、オンラインで仕事をしている。

 

一昨年まで働いていた代理店でも、日常的に遠隔で仕事をしていた。ここドイツにある代理店から、東ヨーロッパやインドのようなITリテラシーの高い、しかし賃金が比較的低い国々に、私たちが作った広告やポータルのデザインやコンセプトの、プロダクションやプログラミングの外注を出していたからだ。

 

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そこで、会ったことのない人よりも、一度でも会ったことのある人の方が、圧倒的にスムーズに仕事が出来る、という事を経験していた。これだけインフラが整って来ても、人類の方が遠隔で仕事をするのに”まだ”適合していないのではないか。声や文字だけの情報伝達では伝わらないものがまだ沢山あって、会うことによって得られる情報、見た目や仕草、癖、雰囲気や物腰、匂いや手触り、品格や知性などを知ることは、コミニケーションを助ける要素になるに違いない。

 

そういう理由もあって、今回も数回、大事な局面にはフランクフルトとベルリン両都市に行き、共同作業する人たちと会って、一緒に仕事をする機会を設けている。

 

しかし、もっと遠隔勤務の一般化が進み、ある業界、例えば情報産業では、物理的に集まって定時まで働くことよりも能率が良いことが、広く認知されるであろう数年後には、このような考え、リアルで会ったほうが仕事が捗るよね、はノスタルジーとして懐かしがられるのに違いない。

ドイツで、フリーランスのデザイナーとして働く

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私の仕事は、フリーランスのアートディレクターで、1999年から、ドイツのメディアセンター、ハンブルグに住んでいる。

 

一昨年まで、ドイツに来てからずっと、いくつかの広告代理店でサラリーマンをやっていたけど、ある日突然、私の働く代理店が閉鎖することになり、職を失った。大きな会社にM&Aされて、いくつかあったヨーロッパ支所を段階的に全て閉鎖し、数百人いた従業員の殆どがバラバラになった。グローバル企業だっただけに、グローバリゼーションの辛いところがモロかぶった形になった訳だ。

 

そういうわけで、ところてん式に押し出された形で始めたフリーランシングだけど、まだまだ景気のいいドイツでは、フリーランスのマーケットがとてもアクティブで、今の所、私のような外国人でも仕事が見つかる。

 

メルケル首相に感謝。

 

私のドイツで経験した、または進行中の仕事について、できる範囲で書き綴ろうと思う。海外で、特にクリエィティブ職で働くことに興味がある人たちの参考になればいいと思っている。