磯貝 浩一郎、koichiro isogai, フリーランス、

ドイツ、アートディレクター日記

海外でフリーランスや、クリエイティブ職に興味がある人達に向けて

オランダのデザイン見本市に1人で参加した

こんにちは、北ドイツのハンブルグで、アートディレクターをしているコイです。

 

今日は、オランダのアムステルダムで行われたデザイン見本市に、自分で作ったプロダクトを持って1人で乗り込んだお話をしたいと思います。

 


自前でプロダクトを作ったまではよかったのですが

フリーのアートディレクターとして独立してから受注を受けた仕事の傍らに、自分で考えたプロダクトを作っていました。コツコツと数年かかってプロトタイプを作り、身銭を切って生産したまではよかったのですが、いざ出来上がって、ちゃんとしたウェブショップも作り風呂敷を広げても、それだけでは売れません。当たり前ですね、私の知り合い以外は誰もそのプロダクトを知らないのですから。

 

これまでの人生、グラフィックデザイナーとして代理店の製作部に所属し、できたものを営業に丸投げし売ってもらっていた訳で、自分で売ったことがありませんでした。さぁ、どうやって売ったらいいのでしょう?

 

プロダクト・イン

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アイデアスケッチ

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プロトタイプ_01

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プロトタイプ_02



商売にはまずリサーチありきで、市場が求めているものを調査し、それに商品やサービスを合わせていくやり方と、まだ市場にないユニークなものを開発しそれを売る、というアプローチがあるということです。私の場合は後者、いわゆる「プロダクト・イン」という部類ですが、ユニーク(独創的)なだけに需要を掘り起こしていく必要があります。「まだ」誰も必要としていない商品なので、とにかく説明し、お客さんを納得させなくてはいけません。難しそうです笑

 


とりあえずはD2Cから始めてみる

地元ハンブルグで行なわれている、一般消費者が製作者から直接買う、いわゆるD2C - Direct to Consumerと呼ばれる商業形式のデザインマーケットに参加してみました。やはり始めは地元から、マーケットの場所代を除けばマージンも取られないし、直接消費者と話しながら売るのは得るものも大きいのは間違いありません。

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BtoCマーケット / ブース

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BtoCマーケットでの販売

そのD2Cで私が直面したのは、私の安価なプロダクト(12€、およそ1500円)を売るために、一人一人を説得しなくてはいけないことでした。黙っていても商品は売れません。

 

規模の大きなものにも参加してみましたが、同じ事です。商売とはそういうものなのかもしれませんが、見たこともない商品を売るにはたくさん説明する必要があり、1日に100人に100回同じ説明をしなければなりません。こ、これは大変だ...

 

BtoBに挑戦してみる

そんな訳で、今回アムステルダムで開催された、BtoB - Business to Business、企業を対象とした商取引のデザイン見本市に参加しました。

 

プロ相手なので、(成立すれば)取引額が大きく、まとまった注文を期待できる代わりに、参加費も通常は高額です。しかしこのアムステルダムで行われた見本市 - showUPにはスタートアップ枠があり、限定的ではありますが比較的に安価で参加できる仕組みがあり、それを利用しました。

 

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アムステルダムのデザイン見本市会場

見本市はアムステルダム中心地から離れた巨大な会場で行われました。基本的に参加者、来場者の80%がオランダのマーケット関係者であったようですが、オランダは開かれた国であり、デザインのレベルが高いので、EU圏内からも多数の来場者があったようです。

 

私がもらったスペースは、2メートルの棚2つ、しかし隣とは壁で区切られた独立したスペースでした。その巨大な会場に置くと私の開発した小さな商品は、さらに小さく見えました笑。

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私のもらったスペース

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2メートルの棚2つ

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巨大な会場でさらに小さく見えるプロダクト

私はオランダ語は話せないので、英語かドイツ語で営業しましたが、オランダ人は英語がフツーに話せるので、そこに障害はありません。自分のプロダクトのことだし説明するべき事は大体決まっているので、コミニケーションもそう難しくはありませんでした。

 

D2CとBtoBの大きな違い

前記したように、直接消費者に売るのも難しいのですが、販売店や卸業の人達に売るのは別の意味で難しい面があります。

 

まず直接消費者に売るのは、自分のお財布との相談、そして好きか嫌いか、ということに尽きます。逆に言えばそこをクリアーすれば買ってもらえるのですが、プロはもっと多角的に商品を見るでしょう。顧客の顔を思い浮かべたり、どのくらい売れるのか、これをお店に置くことにどういう意味や効果があるか、なども当然考慮されるでしょう。有り体に言って、もっとシビアなのです。

 

初日に凹む

初日は日曜日、ヨーロッパでは日曜は普通お店はお休みなので、リテーラー(販売店)に卸すディストリビューターやデパートなどの小売店のバイヤー達が多く訪れたのではないかと思います。

 

そこで同じような批判を何度も受けました。要約すると、もっと簡単に、手間のかからない、売るのに説明が多く必要とされない商品にした方がよい、というものでした。凹みました笑。

 

私のプロダクトは、自分で組み立てる必要があるDIY (ドゥー • イット • ユアセルフ)で、完成させるためにはさらに別に中身を調達しなければならない性格のもので、面倒です笑

 

ギフト需要を狙った価格帯ですから、あげた人に苦労を強いては売れないとダメ出しもいただきました。

 

でもそれが私のコンセプトで、半分しかないものを人にあげて、後の半分はもらった人が工夫して完成させる、というクリエイティブなプロセスを楽しむことに意味があると思っていました。しかし何度もプロに言われて、これは独りよがりな考え方なのか、と悩みました。

 

そして2日目を迎える

2日目は月曜日、少し違った層のお客さんが訪れたように思えます。月曜はミュージアムショップや個人商店を経営する人などがお休みで、もっと「個性的で面白いもの」を探していた人が多かったのではないか、という感じがしました。

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ミュージアムショップのバイヤーと話す



そこでも上記した「独りよがり」のコンセプトを説明したところ、1日目とは少し違った反応がありました! その日の終わりには参加費が出る程受注をいただき、オランダ、ベルギー、ドイツの小売店との取引のきっかけを掴むことができました。それはD2Cの一人ひとりのお客様にものを売るのとは違ったレベルというのを体感できたことでもありました。一人のバイヤーから購入していただくということは、D2Cの一人ひとりのお客様に買っていただくのに比べて数十倍、こともすれば数百倍の取引額になるわけですから。

 

見本市に参加するためのコスト

国を跨いだグローバルな取引が個人レベルで可能になった昨今、この様に手間と費用のかかる見本市に参加する必要が本当にあるのでしょうか? その数日間に出展者が負担する費用は、私の様な小さなスタートアップでも数十万円、大きなブースで来場者を迎える出展者には数百万円単位の出費は下らないだろうし、人員や商品数が増えればそれ以上かかるでしょう。それは見本市のネームバリューや集客力にもよるだろうけどとにかく大変な費用です。それだけの見返りがあるのでしょうか? また見本市は、来場者にも出費を求めます。入場費や旅費、そして貴重な時間を割かなくてはならないのですから。商売には何がしらの先行投資が必要で、人やものを動かさなくてはなくてはならない見本市は依然として比較的大きな資本が必要です。

 

つまるところ見本市に参加するのは、ブランドを育てるという先行投資の意味が大きいのには間違いはなさそうです。ということは、継続しなければ意味がありません。それは私の様な小さなスタートアップには、投資を受けることでもない限り、難しいことです。

 

もっと安く生産者と卸業者をつなぐ方法

いろんなコストが劇的に下がったこのインターネットの時代、商品を売買するには上記の見本市以外にもいろいろな方法があると思われます。商品を作ったからにはそれを模索していくしかないのですが、その見本市で出会った業者が後日連絡してきて、彼らが運営しているプラットフォームに登録する運びになりました。そのプラットフォーム業者は、BtoB見本市の機能をインターネット上で再現していて、つまり小売業者がそこで新興ブランドなどを探し卸売価格でまとまった数量を購入し、それに対して売った方の生産者側が幾ばくかの手数料をプラットフォームに支払う、というものです。これなら売った額に対しての課金なので、大きな先行投資は必要ありません。 どのくらい売れるかはわかりませんが、これならリスクがないので、販路の一つとして悪くありません。しかしこのオンライン見本市業者に登録を可能にしたのも、リアルの見本市に参加していたからこそです。やはり見本市に参加することには、一定の意義があることには間違いはなさそうです。

 

まとめ

ここまで読み進めていただいて、ありがとうございました。出展者として参加したのは今回が初めてでしたが、日本の卸業者、つまり購入する側のお手伝いとしてヨーロッパの国際的で大きなおもちゃの見本市に何度も参加したことがあります。そこで見たのは中国のプレゼンスの大きさ、それに反比例して日本のプレゼンスの低さでした。前記の通り、見本市には一定の意義と小さくない可能性があります。国際的な取引となれば、今のところ必須であると言っても過言ではないと思います。これは今日の外向きの中国と内向きの日本の状況を如実に表したものではないのでしょうか? 

 

日本のメーカ、並び卸業者の皆様、私が通訳から商談取引までお手伝いしますので、見本市に参加されたい方は私に御用命を笑! 

 

そして以下が私の見本市に出した製品のウェブサイトです。よかったら見てみて下さい。そして気に入ったらぜひ購入してみて下さい、日本にも送りますよ!

www.oribon.de

 

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ストーンペーパープラントポット、熱帯雨林の動物シリーズ

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プロダクト、ストーンペーパープラントポットのパッケージ